第63回
2016年3月3日更新
こんにちは。プロボウラーの
逸見正晃です。2016年2月発売ボール最後の1球をご紹介いたします。
今回取り上げます新ボールは、
DV8ブランドより
ヘビーに対応した「グラッジ™」です。
新たなワールドリリースボールは台風の目となるのか?新素材カバーの中でも最強のフックパワーを秘めた今作にご期待ください。それでは、第63回
ストライクレビュー「グラッジ™」編をどうぞ!
55°
×
4・5
/
8
×
45°・ピンアップセンターレイアウト・BH有
65°
×
4
×
50°・薬指穴内にピンを配置
博多スターレーン(ウッドレーン)
42フィートのクラウンコンディション
30.6
ml
カストディアンプラス
42°
オイルが多くて曲がらない、
長いオイルだと滑ってしまって投げ辛いといった悩みは多くのボウラーが抱えていることかと思います。
ミディアム全般のボールは扱い易さと投げやすい範囲が広くメインボールとなることは間違いありませんが、
オイリー以上やドライ気味なパターンではやはり使用が難しいものです。
そうした場合には、
ヘビー向け、
ドライ向けといったボールを選択するのが効果的で常識とさえ言えるでしょう。
今回新たにリリースされた
DV8ブランドの最新作「グラッジ™」は、これまで発売してきた
ブランズウィックグループのボールにおいて最大のフックポテンシャルを持つボールとして誕生いたしました。
ともに新開発されたカバーストックと
コアデザインは非常に強い性質を持ち、正しく
ヘビーを攻略する為に製造されたボールと紹介させていただきます。
まず、一番のポイントは新素材「コンポジット」系カバーストックの中でも過去最高の摩擦力を生み出す「コンポジット・フックソリッドリアクティブ」を採用している点であり、明らかに物が違うというレベルでのレーンキャッチ力を実現いたしました。
オイルに対して大変強い仕様でありながら、表面が意外にサラサラとしている点から劣化の原因となるオイル吸着も控えめで耐久性に富んでいるように思います。表面にオイルや汚れが付着している状態ではパフォーマンスが鈍ってしまう為、こまめなメンテナンスは必要不可欠です。
謳い通り、従来のボールでは体感できなかったレベルでのキャッチ力を実現している為、幅広く使うボールではなくトーナメントでの朝一や引き立てのコンディション対策が主たる利用用途となるので、購入への参考としていただければ良いのではないでしょうか。
コアも新たに開発された
「グラッジ・低・RG・アシメトリック」コアを搭載していますが、このコアは「RG Min:2.490、ΔRG:0.056」の強力な数値が示すように、非常に気持ち良い転がり感があります。
カバーストックの強さも噛み合い、レーン上を噛みつくかの如く素早い転がりが魅力と捉えています。
数多く
DV8ブランドボールを投げてきましたが、この感触は大のお気に入りだった
ヘルレイザー・リベンジを彷彿とさせる程の水準で、転がりの良いボールをお探しの方は間違いなく納得してくれるはずです。
箱出で投球した最初の印象は、ウッドレーンである
博多スターレーンでは正直使用頻度が低いかなという具合からのスタートでした。レーン硬度が柔らかいウッドでは、摩擦の強さがマイナスに働いてしまう危険性を含んでいる為、
手前からの過剰反応が起こる結果からボールの曲りが読みづらく難しい感覚に陥ってしまいました。正直、扱い易いボールという表現は適しにくい部分があるので「いつでも、だれでも、どこでも」適用のボールではない点は認識の上、ご利用いただけると良いでしょう。
しかしながら、そうしたスペックであるということは、適した環境下では無類に活躍が期待できる強力な武器という側面があるので、複数のボールをラインナップする競技者等には大変有効なボールがリリースされたことになります。
箱出の番手が#500
マイクロパッド→
#1000ですので、そのままでは非常に曲り出しが早くオイルの中だけを辿るように攻めなければいけないようにも見えたので、
しばらく投球した後に#2000
マイクロパッド→
#4000へと番手を細かく仕上げて試してみました。すると、アウトサイド方向のオイル量が少なく塗布されたエリアに出た際の戻り感がよりスムーズになり軌道が読めるようになりました。
個人的にはこれでもまだ噛みが強く感じていた為、そのままポリッシュ加工を施してみるとボールの動きが段々とシャープになりウッドレーンにおいても投球ができることが証明されたように思います。そして、やはり表面加工はボールに及ぼす影響力がとても大きく、投球環境やボウラーによって積極的に加工を試みることをお勧めいたします。
ハイパフォーマンスボールの特徴として、オイルキャッチに優れたボールは15
〜
20G程度投球し、表面にオイルが微量に付着したくらいの方が過剰な反応を抑えられ、軌道イメージが分かり易くなる部分があるので、その程度までは箱出での投球でも良いかもしれませんが、参考までに紹介させていただきます。
それから、投球していて感じたことは、今作は
DV8ブランドらしくパワフルな投球を行うなど、フィジカルに優れたボウラーが投げることにより、ポテンシャルを大きく引き出せる要素が広く存在するということ。
ボールを豊かに転がせるにつれてパフォーマンスが強力になるのは言うまでもありませんが、その伸びシロが多く感じられます。回転が不足気味の方でもグイグイ曲がってくれるというよりは寧ろ転がすことによって真価を発揮してくれるボールと表現した方が体感的にはしっくりきています。
あまり転がすことが得意ではないけれど、入射角度豊かな投球を目標とする方は同月にリリースされた
ブランズウィックの
オーラ™・ECSをお勧めいたします。このあたりはワールドリリースボールと日本向けボールの違いかもしれません。
玄人好みとも言うべき今作「グラッジ™」は、今までのボールで曲がらなかったから選択する、よりも多少曲がっているけれど更に大きなフックモーションを期待して選択する方法をとっていただけると、ニーズに沿ってプレーしていただけるはずです。
今回のドリルレイアウトは
「55°×
4・5/
8×
45°」を選択し、ピン位置でピンアップのセンターに位置しています。
サイドウェイトの観点から、ミッドライン上にバランスホールをドリルいたしました。「グラッジ™」の強力なスペックではこの数値でも十分に強いパフォーマンスを示しますが、
ヘビー専用で手前の滑りを抑制したければドリリングアングルを狭くしピン
-
PAP距離も短く設定しても良いでしょう。
比較対象として投球したのは、
ラディカルブランド屈指のフックボールである
グル™・シュプリームです。
こちらは
コアデザインに自信を持つ同ブランド取扱いボールの中でも現在最高のフックポテンシャルボールとなります。
レイアウトは
「65°×
4×
50°」と、多少違ったドリルをしていますが、表面は同様の番手加工を施した上で投球いたしました。
グルシリーズのコアは軸移動が早く捻じれ感が抜群なのに対し
「グラッジ™」のコアはより手前からグルグルと転がり最後まで曲り切ってくれます。
違いを感じたのはやはりカバーストックの部分で、
グル™・シュプリームも決して弱くありませんが、ミッドエリアでスキッドしすぎる状態においても「グラッジ™」は空回りすることなくレーンを噛んで直進してくれました。
オイルの上を投球しているにも関わらず、実量よりも薄く感じさせるのはこのボールの強さゆえでしょう。
オイルゾーンからドライゾーンに膨らませても十分なピンアクションを見せてくれますが、
オイルゾーンをずっと辿ってポケットヒットしても強力なピンキャリーを出してくれる所がPRポイントに思います。
グル™・シュプリームは曲りが読み易い曲り系という認識で、
現在のラインナップでは
ブランズウィックの
ニルバーナ™と並びレーン攻略のオイリー部門を担当してくれている心強い味方の一球と位置づけています。
レーンを進むにつれて回転力が増す
グル™・シュプリームは膨らませたラインの投球に長けており薄い方向への投球を考慮するとコチラの方が軌道イメージは視覚的にわかりやすいでしょう。
ありふれたオイルパターンでは顕著な違いは見出しづらいかもしれませんが、この「グラッジ™」は得意とする場面を確実に持っているボールとして間違いない一球です。
もし、貴方が競技会で多量のオイルに悩まされてきた場合、この「グラッジ™」はレーン攻略の救世主となるかもしれません。オイルに負けないモンスターパフォーマンスボールを是非、GETして有効に投球してください。
それでは、次回の
レビューでまたお会いしましょう。
執筆後記
数ある新素材コンポジット系カバーの中において、最もパワフルなカバーと新開発の転がり感抜群コアとの融合によるビッグフックボールが、遂に登場!オイリー局地戦を力強く乗り切る為に「グラッジ™」を是非、手に入れてください!
今回のドリルレイアウト
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